「真空調理の父」谷孝之の真空調理ポータルサイト

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真空調理の基礎知識

(4)真空調理の工程と留意点

2)工程ごとの留意点 2
③袋詰めと真空包装
袋詰めと真空包装
 下処理した素材と調味料を真空包装用フィルムに入れ、脱気します。
 この工程で最も大切なことは、徹底した衛生管理です。まず食材に直接手で触れることは絶対に避けましょう。十分に洗浄した手で、使い捨ての手袋をし、トングなどを有効に使いましょう。
 下処理した食材は、90分以内に芯温10℃以下に冷やしでから包装します。
 ローストビーフと付け合わせの野菜というように、加熱時間が違うものは別の袋に入れましょう。また、真空包装用フィルムを選ぶときには、以下のことに注意してください。
●ピンホールはないか
●耐熱性、耐冷性は十分か(−50℃〜120℃が目安です)
●耐酸性があるか
④一次加熱
一次加熱
 食材と調味料を入れ真空パックした袋を、湯煎かスチームコンベクションオーブンなどで低温加熱します。加熱温度や加熱時間は、食材や仕上がり状態、保存期間などを考えて決めましょう。
 加熱温度は芯温58〜95℃が基本です。95℃を超えると、食材や真空フィルム内の水分が水蒸気になって袋を膨張させ、破裂してしまうことがあり、危険です。
 加熱温度は、加熱殺菌が可能な芯温75℃以上に設定することを基本と考えるべきですが、真空調理の価値の原点が「低温加熱」がもたらすジューシィな仕上がりにあることを考えると、食味や食感を優先して75℃以下の温度で加熱調理を行うこともありえます。 その場合は、長時間をかけて加熱することで、有為な殺菌効果を得ることができると考えられており、低温殺菌牛乳も、この原理にもとづいて製造されています。 もちろん低温加熱を行う際は、食材の選定から下処理、真空包装までの工程で、通常の調理作業以上の厳密な衛生管理が必要なことは言うまでもありません。
 また、一時加熱を終わり、急速冷却した後の袋には、必ず調理した日付を書いておきましょう。そうしないと、いつ製造したものかが分からなくなり、危険につながります。
達人のワンポイントアドバイス
加熱温度による食材の変化(変性)を知っておこう!
さまざまな食材が何℃でどのように変化していくのかを、しっかりと理解しておくことが必要です。
加熱調理と衛生管理のベースとなる温度帯ですので、必ず覚えておきましょう。
10〜60℃

細菌が繁殖しやすい温度帯です。食材や食品をこの温度帯に長時間放置せず、加熱・冷却の際も、この温度帯はできるだけ早く通過させるようにします。

30〜45℃ 魚のコラーゲンがゼラチン化し始めます。
62℃ 動物性たんぱく質が凝固し始めます。
68℃ 「分水作用開始温度」ともいわれ、動物性たんぱく質から水分が出始め、素材の収縮が急速に進みます。肉がパサついた状態になるのもこのためです。
92℃ 食物繊維に含まれるセルロースの破壊が始まります。コメやイモ類に多いでんぷん質は、この温度帯を上回らないとセルロースが破壊されないため、コメの場合は、いわゆる「ガンダ飯」状態になります。ご飯を炊くときの「初めチョロチョロ中パッパ・・・」の、中パッパの状態にする必要があるわけです。
95℃ 真空調理する際の加熱最高温度です。これを超えてしまうと、フィルム内の水分が蒸気になり、体積が大きくなってフィルムを破裂させてしまうこともあるので、注意が必要です。
食材ごとの最適な加熱温度とコツを知っておきましょう。
エビ類は60〜70℃の低温加熱では、身が粘土状になってしまうので、それ以上の高温で加熱したほうが本来の食感が得られます。逆にサーモン類は、低温加熱による真空調理を使うと、素材のうまみをより強く引き出すことができます。
大根の食感(歯ざわり)を残したい場合には、セルロースが破壊される92℃まで上げずに調理するとよいでしょう。ただ、根菜類には土中のボツリヌス菌が付いていることがあるので、芯温85℃で10時間加熱するなど、衛生管理に十分注意して調理する必要があります。
サツマイモは60〜85℃あたりの温度帯で緩やかに加熱するか、80℃台をキープするようにして、でんぷんを麦芽糖に効率よく変性させ、甘味を引き出した後、92℃以上に加熱してセルロースを破壊する手順で調理するのがコツです。