「真空調理の父」谷孝之の真空調理ポータルサイト

真空調理ドットコム
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

真空調理の基礎知識

(6)真空調理を上手に活用するために

1)欠かせない3つの条件
 真空調理の導入を成功に導くためには、何よりもまず関係者の意識と設備や運営に関わる仕組みの転換が必要です。中でも最も重要なポイントとなるのが、以下の3つの条件のクリアです。

①個人から組織への意識転換(「職人技」から「システム」へ)
個から組織へ
 プロの調理師の方々が、長年の修行を経て修得された包丁さばきや、火加減、塩加減など、まさに達人技の価値は、デジタル化が進む今の時代においても決して色褪せるものではありません。
 しかしながらそうした熟練された料理人の数はどの分野でも限られており、育成を図るには長い時間とコストがかかるため、大量調理施設などではさまざまなジレンマの原因にもなっています。
 真空調理は、熟練された料理人の味に限りなく近い品質の料理を経験の浅いスタッフでも比較的容易に再現し、お客さまに提供するための有効な手段の1つです。 熟練された料理人個人の知財である調理技術を温度と時間のデータを基本とするレシピマニュアルを使って他のスタッフの共有財産に転化し、再現することができます。
 そのためには、調理場のリーダー自身が率先して自己の知財を公開し、レシピマニュアル化して組織全体の共有資産としての活用を図る姿勢が、真空調理の導入を行う際の不可欠な前提条件となります。
 過去の常識からは、こうした「個」から「組織」への意識転換は、決して容易なことではありませんが、調理スタッフのモチベーションが高まり、お客さまの満足度や、業績の向上をもたらす鍵であるとの認識をもち、積極的に取り組む必要があります。
②アナログからデジタルへ、ソフト・ハードの転換(弱火・中火・強火も数値に翻訳化)
 真空調理を行ううえでは、調理技術の共有資産化と再現化のための、適切なレシピマニュアルの開発整備が大きな課題となり、経験と勘にもとづくアナログ知財を数値に置きかえるデジタルデータ化の作業が必要になります。
 また、レシピ通りの料理を仕上げるためには、各調理工程ごとの加熱・冷却温度と時間を高い精度でコントロール・管理できる厨房機器が欠かせません。このように真空調理を安全かつ効果的に運用するには、調理ソフトとハードのデジタル化が不可欠な条件となります。
③TT管理(温度と時間の管理)の実践
スチームコンベクションオーブンの操作パネル
 TT管理とは、食品の安全性を含めた品質管理や調理のマニュアル化に必要な加熱・冷却等の調理の加減を、温度(temperature)と時間(time)の数値としてデータ登録し、最適な工程管理を行う方式で、真空調理を含めた新調理システムでは、このTT管理を基本とした運営を前提にしています。
 TT管理の実践は「食味における品質の確保」と「食品衛生管理の徹底」の2つの側面で大きな効果をもたらします。すなわち熟練した料理人の経験と勘に裏づけられた最高レベルのおいしさを、加熱温度と時間のデータに置き換えることで、経験の浅いスタッフでも再現可能にする調理技術上の効果と、温度と時間の適切な運用管理によって加熱調理から冷却、冷蔵・冷凍保存などの一連の調理工程のすべてにおいて、食中毒細菌の殺菌と増殖の抑制の最適な実践を図る衛生管理手段としての効果です。
 なお、ここでいう温度とは、芯温計を使って食品の中心温度(芯温)を計測・管理することを意味します。