「真空調理の父」谷孝之の真空調理ポータルサイト

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真空調理の新たな貢献領域

(2)おいしく、美しく、栄養価の高い介護食・嚥下食づくり

1)急増する摂食・嚥下障害者
 世界にも例を見ない急速な高齢化が進むわが国では、増加し続ける医療費の抑制策を始めとするさまざまな課題が発生しています。
 中でも深刻な問題になりつつあるのが、後期高齢者の増加に伴う摂食・嚥下困難者の急増で、特別養護老人ホームなどでは嚥下食等の形態食が必要な入所者が、全体の半数以上を占めている施設も珍しくありません。
 そして多くの施設では、そうした摂食・嚥下機能に障害のある患者さんや高齢者用の食事として、キザミ食が提供されています。
 しかしながらキザミ食の大半は、見た目も味も食欲をそそるものにはほど遠いうえに、誤嚥事故につながりやすく、食品衛生上のリスクも高いため、おいしく、美しく、安全で栄養価の高い介護食・嚥下食への転換が強く求められています。

2)「嚥下食ピラミッド」の開発と真空調理
 そうした実態を背景に2004年、浜松大学の金谷節子教授らを中心に、咀嚼・嚥下機能のレベル評価基準とレベルに応じた食事の物性基準を整理統合した「嚥下食ピラミッド」が開発され、適切な堅さや粘度等を備えた、品質の高い食品づくりを目指してさまざまな取り組みが進められています。
 そして、より良い介護食・嚥下食に求められる「おいしさ」「見た目の美しさ」「軟らかさ」「栄養成分の保全性」「安全性」などの条件をクリアするうえで、真空調理の特性が効果的に機能することから、近年高齢者介護施設での導入が目に見えて増加しています。
■介護食・嚥下食調理における真空調理の貢献ポイント
①低温加熱によって、食材の旨みを活かした軟らかくジューシィな料理が作れる。
②真空包装状態で加熱するため、食材に含まれるビタミンや栄養成分の溶出がなく、栄養価の高い食事の提供が可能。
③真空状態で加熱・保存を行うため、食品の劣化や生活習慣病の要因となる活性酸素の働きを抑制することができ、健康維持&増進への貢献が図れる。
④普通食を真空包装しチルド保存しておけば、必要なタイミングに必要な量だけ「嚥下食ピラミッド」の各レベルに応じた食品に加工することが可能なため、ロスのないタイムリーな運用が図れる。
⑤TT管理にもとづいて安全・確実に加熱・冷却し、真空包装状態でチルド保存するため、二次汚染の危険性も少なく、高度な衛生管理を実践できる。
嚥下食メニュー

3)「凍結含浸法」にも真空調理の原理が寄与
 「凍結含浸法」は広島県食品工業技術センターによって開発された食品加工技術です。
 酵素の働きを利用することで、食材の見た目や風味がそのまま残された軟らかい食品づくりが可能になることから、これまでにない高品質な介護食の提供に道を拓くものとして、わが国だけでなく世界のさまざまな国で脚光を浴びている技術です。
 その基本原理は下記の図のように、凍結解凍した食品素材を酵素液に漬けたまま減圧することにより、細胞同士の隙間の空気が抜けて酵素が一気に浸み込む作用を活用したもので、真空調理の応用発展技術とも言える側面をもっています。
凍結含浸法の原理
出典/広島県 食品工業技術センターホームページ
 現在、さまざまな食品メーカーなどで、「凍結含浸法」を活用した介護食商品の開発が進められるとともに、高齢者介護施設での介護食調理に応用するためのノウハウ研究への取り組みも行われており、近い将来に画期的イノベーションをもたらすものとして期待されています。